水星座の作家さん、カズオ・イシグロ氏の『日の名残り』を読んで
水星座さんの書く小説ということで、読んでみました。
『日の名残り』
(こちらは、アンソニー・ホプキンスの映画版)
カズオ・イシグロ氏の小説です。
まずは、イシグロ氏のホロスコープを出してみますね。

水星座が5個(蠍座3、蟹座2)、火の星座が2個、風星座が3個、土星座はゼロです。
小説は、
時々、先を読むのが辛くて、
手が(目が?)止まってました。
老いた執事さんの、モノローグの小説で、
初めての旅行で、様々なアクシデントが起こるなか、
過去に起こった出来事を、あれこれと回想していく
ストーリーになっています。
ここからは、ネタバレありです。
─────
主人公の回想に、何度も出てくる女中頭のミス・ケントン。
自分の記憶にある出来事を、主人公は
淡々と回想していきます。
ほんのちょっとのすれ違い。
『あの時がそうだったんだ』と、後からわかる分岐点。
「おめでとうございます」と、あくまで執事としての自分で
対応する主人公。
その日は、お屋敷で重要なお客様が来訪していて、
その対応に追われていた。
おそらくは、泣いているのではないか、と思われる彼女の部屋の前で、
立ち尽くすミスター・スティーブンス。でも、職務に忠実な彼は、
結局は、その場を立ち去ってしまう。
そう、これが運命の分岐点でした。
旅行の最後に、本来の目的だったミス・ケントンに会うわけですが、
思い出話に花を咲かせる二人。そして話は、彼女の家出の話に。
すると、長い間、夫を愛せなかったと告白する彼女。お屋敷を辞めたとき、本当は辞めるつもりななかったと。ミスター・スティーブンスを困らせたくて、その計略の一つとしか考えていなかったと、彼女は言います。
でも、家出をして、すぐ、私のいるべき場所は夫のもとしかないのだ、と夫人は語ります。
時計をあともどりさせることはできないから、と。
この話を聞いて、この老執事は、初めてモノローグで
と、心情を語るんです。
「おっしゃるとおりです、ミセス、ベン。おっしゃるとおり、いまさら時計をあともどりさせることはできません。そのような考えがあなたとご主人の不幸の原因でありつづけるとしたら、私はこれから安心して眠ることさえできなくなります。さよう、ミセス、ベン、私どもは、みな、いま手にしているものに満足し、感謝せねばなりますまい。…」
と、老執事は夫人の言葉のあとをつぎます。
お別れする時、ミス・ケントンは泣いていました。
そんなミス・ケントンに、ミスター・スティーブンスは笑顔でお別れの言葉をかけます。
この老執事がつかえた主人には、実在のモデルがあるそうです。
歴史は、後から振り返ると、いろいろ言えるけど、
当時、その立場にいる人は、それが良かれと思って(正義だと思って)、
実行してたんだ、ということですね。
久々に小説を読んで、泣いてしまいました。
過ぎてしまった今となっては、どうすることもできない。
あの時の分岐点。
思いと裏腹な言葉や行為、
そんなちょっとした出来事が積み重なって、
すれ違ってしまった二人。
運命は、そんな些細な分岐点で成り立っているのかも
しれないけど、
せつないですね。
『日の名残り』
(こちらは、アンソニー・ホプキンスの映画版)
カズオ・イシグロ氏の小説です。
まずは、イシグロ氏のホロスコープを出してみますね。

水星座が5個(蠍座3、蟹座2)、火の星座が2個、風星座が3個、土星座はゼロです。
小説は、
時々、先を読むのが辛くて、
手が(目が?)止まってました。
老いた執事さんの、モノローグの小説で、
初めての旅行で、様々なアクシデントが起こるなか、
過去に起こった出来事を、あれこれと回想していく
ストーリーになっています。
ここからは、ネタバレありです。
─────
主人公の回想に、何度も出てくる女中頭のミス・ケントン。
自分の記憶にある出来事を、主人公は
淡々と回想していきます。
ほんのちょっとのすれ違い。
『あの時がそうだったんだ』と、後からわかる分岐点。
「ミスター・スティーブンス。私と知り合いとの間に今晩どんなことがあったのか、あなたは少しも関心がありませんの?」
「無礼と思われたら困るのですが、私はすぐにでも上にもどらねばならないのです、ミス、ケントン。この瞬間、このお屋敷では世界的な重要性をもつ出来事が進行しているのですよ。」
「いつだってそうではありませんか。よろしいわ、ミスター・スティーブンス。あなたがお急ぎだと言うなら、私が申し込みを受け入れたことだけお伝えしておきます」
「申し込みとは、ミス・ケントン?」
「結婚の申し込みですわ」
「おめでとうございます」と、あくまで執事としての自分で
対応する主人公。
その日は、お屋敷で重要なお客様が来訪していて、
その対応に追われていた。
おそらくは、泣いているのではないか、と思われる彼女の部屋の前で、
立ち尽くすミスター・スティーブンス。でも、職務に忠実な彼は、
結局は、その場を立ち去ってしまう。
そう、これが運命の分岐点でした。
旅行の最後に、本来の目的だったミス・ケントンに会うわけですが、
思い出話に花を咲かせる二人。そして話は、彼女の家出の話に。
すると、長い間、夫を愛せなかったと告白する彼女。お屋敷を辞めたとき、本当は辞めるつもりななかったと。ミスター・スティーブンスを困らせたくて、その計略の一つとしか考えていなかったと、彼女は言います。
でも、そうはいっても、ときにみじめになる瞬間がないわけではありません。とてもみじめになって、私の人生はなんて大きな間違いだったことかしらと、そんなことを考えたりもします。そして、もしかしたら実現していたかもしれない別の人生を、よりよい人生を──たとえば、ミスター・スティーブンス、あなたといっしょの人生を──考えたりするのですわ。そんなときです。つまらないことにかっとなって、私が家出をしてしまうのは…
でも、家出をして、すぐ、私のいるべき場所は夫のもとしかないのだ、と夫人は語ります。
時計をあともどりさせることはできないから、と。
この話を聞いて、この老執事は、初めてモノローグで
その瞬間、私の心は張り裂けんばかりに痛んでおりました。
と、心情を語るんです。
「おっしゃるとおりです、ミセス、ベン。おっしゃるとおり、いまさら時計をあともどりさせることはできません。そのような考えがあなたとご主人の不幸の原因でありつづけるとしたら、私はこれから安心して眠ることさえできなくなります。さよう、ミセス、ベン、私どもは、みな、いま手にしているものに満足し、感謝せねばなりますまい。…」
と、老執事は夫人の言葉のあとをつぎます。
お別れする時、ミス・ケントンは泣いていました。
そんなミス・ケントンに、ミスター・スティーブンスは笑顔でお別れの言葉をかけます。
この老執事がつかえた主人には、実在のモデルがあるそうです。
歴史は、後から振り返ると、いろいろ言えるけど、
当時、その立場にいる人は、それが良かれと思って(正義だと思って)、
実行してたんだ、ということですね。
久々に小説を読んで、泣いてしまいました。
過ぎてしまった今となっては、どうすることもできない。
あの時の分岐点。
思いと裏腹な言葉や行為、
そんなちょっとした出来事が積み重なって、
すれ違ってしまった二人。
運命は、そんな些細な分岐点で成り立っているのかも
しれないけど、
せつないですね。
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